VOL.6

フィリピンでの原体験が、
「環境問題」への意識を生む。

Profile

院生
山本 直明さん

環境資源工学科
修士2年 山崎研究室

フィリピンでの原体験が、
「環境問題」への意識を生む。

私は父親の仕事の都合で3歳から小学4年生までフィリピン、中学2年生から高校3年生までシンガポールに住んでいました。その海外生活の中で一番印象的な記憶は日本とフィリピンでの生活水準の違いです。日本の場合、自然を大切に残す文化とともに、技術発展にも力をいれ、両方のバランスを調整しながら国が発展しています。しかし、途上国ではなかなかそうはいきません。特にフィリピンは、インフラ分野での課題が多く、電力、ガス、水道、通信の整備はいずれも日本に比べると低水準です。また使用している車、電化製品なども非効率的かつ有害な物質を多く排出するものばかりです。このように発展途上国では、経済的な背景から環境保全以前に、直接生活環境を安定させる事業に重きを置かざるを得ないという現状があります。

そんなフィリピンの状況を見て育ち、将来は自分の力でこのような現状を少しでも改善できる仕事がしたいと思うようになりました。その後環境について学ぶことができる大学を探す中で、この学科がまさに自分の学びたいことだと考え入学を決めました。

広い視点でのエネルギーに対する
考え方について学ぶ。

環境問題に取り組む方法には様々な考え方があります。しかし入学した時点での私の考えは、環境保全といえば再生可能エネルギーといった非常に短絡的なものでした。本学科に入り、化石燃料を効率的に生産、運用することで環境に負荷をかけないことがいかに重要であるということを学びました。華やかに見える再生可能エネルギーだけでなく、今ある燃料を効率よく集め、消費する技術といったより広い視座に立った考え方を身につけられたことが本学科に入って得られた一番の学びであったと思います。

環境資源工学科では、主に資源やエネルギーについて学びますが、水や自然環境、大気といった分野の講義もあります。環境という観点で広い分野を勉強するため、必ず自身のやりたいことを見つけることが出来ると思います。そしてその中で自分が興味を持った内容について、その専門的な知見を研究室でより深めることが出来ます。

資資源鉱物の探索と新素材開発。
環境に携われているという実感。

山﨑研究室は、鉱物に関する新素材開発をメインとして研究しています。鉱物の応用性は本当に幅広く様々なことができます。研究室の教授である山﨑先生は学生がやりたい、面白いと思ったことを尊重してくださり、その後も豊富な知識量で的確なアドバイスを下さります。実際に私は、現在の研究テーマを自分で探し山﨑先生に打診して取り組ませてもらっています。

私の研究では、光によって有害ガスを分解する物質(光触媒)をより高性能にする実験を行っています。TiO2光触媒は、光エネルギーを もとにして表面に酸化還元反応が起こすことで空気の浄化や有機物汚れの分解が可能な物質です。身近な例では、工場内の有害ガス除去手段として使われています。一方で光触媒には、単体においては反応効率の不安定性といった問題があります。本研究では別の物質(層状複水酸化物)を光触媒の支持体とすることで課題を改善するというテーマとなっています。当初は研究室で初めてのテーマということもあり、なかなか思い通りの物質が調製できないこともありました。しかし自身で論文を調べ、同期や先生との議論する中で、試行錯誤して調製したサンプルで良い結果が出たときの喜びは他では味わえません。このように直接環境汚染物質を分解する材料開発ができる今は、大変恵まれた環境であると日々実感します。

そのほか山﨑研究室では、不要なもの・使われていないものを有効活用するといった研究が盛んです。現在は建築材料の原料として、産業廃棄物、もみ殻灰などを再利用する研究が行われています。また産業総合研究所との共同研究では、骨折した骨を生体に負荷がない形でつなぎとめる材料の開発といった生物系に近い様な興味深いテーマも扱っています。楽しい研究室なのでぜひ遊びに来てください。

“サスティナブルな社会”の
実現に貢献したい。

就職活動では、海外の事業に携わることができる点、環境問題に対して取り組める点という2つを軸に進めました。SDGsを意識した環境配慮は、今やどの業界においても企業の経済活動する上で無視できない要素となっています。寄与する割合、大きさは業界によって様々ですが、私はその中でもできるだけ大きな規模で環境問題に関わりたいと考えていました。このような考えのもと就職活動するなかで、日本の電力供給のほか、海外での発電所建設に投資、LNGのトレーディングといった環境に対する影響の大きい事業に携わることができる企業に内定をいただくことができました。いずれはフィリピンなどの発展途上国の電力インフラ事業に、効率の良い電力運用システムを導入することで環境問題に対して貢献できるようになりたいと考えています。

大学に入ることがゴールではなく、
どう生かすかを考えてほしい。

環境資源工学科は、環境問題に関心があり学びたいことが明確な人はもちろんのこと、関心はあるものの何をしたいか定まっていない人にもお勧めの学科です。幅広く環境に対する知識を身につけることは、その先の進路を選ぶ上でも色々な側面で役立つことが多いです。
また違う視点のアドバイスとして、サークルや課外活動など学業以外の自分の熱中できるものを探してみるのも良いと思います。勉強とは別の軸で自分が好きなことができ、違う学科の友達も沢山できるため、いろんな価値観を身につけることができます。私自身、所属していたクラシックギターサークルでの経験や友人はかけがえのないものとなりました。早稲田大学は規模が大きいので、自分で調べず、何もしないでいようと思えば、何もしないまま終わってしまいます。しかし自分が主体的に動くことができれば、可能性は無限大です。入学後も学ぶ姿勢を忘れずに情熱をもって日々を過ごし、有意義な大学生活を謳歌してください!