VOL.8

資源開発と
環境保全の調和を目指して

Profile

卒業生/OB/OG
林 浩志さん

環境資源工学科
1998年 修士卒業

資源開発と
環境保全の調和を目指して

出身は栃木県宇都宮で、高校まではずっと地元の学校でしたから、東京の華やかな大学に漠然と憧れを抱いていました。理工学部には、1993年入学し、当時は、資源工学科という学科名でした。資源、エネルギーは、我が国の産業を支える重要な産業ですから、国際舞台で活躍をするフィールドが広がっていると思っていました。

学部、そして修士課程までは資源工学を学びましたが、博士課程は化学工学の専門を磨くために応用化学科に移りました。学位取得後にポストドクターとして1年在籍していたので、早稲田大学にはトータルで10年間学ぶことになりました。

資源の開発は、環境に負担を与える産業であるという側面があります。産業発展の歴史を見ても、公害問題を引き起こした事例も多々ありますので、当然、環境調和、環境保全とセットで開発を進めなければなりません。在学中は水環境工学の研究室で、非常に細かい微粒子を分離する、ユニークな研究テーマに従事していました。私にとってすごくチャレンジングでやりがいのある研究でした。数多くの学会に参加して、研究発表させていただきました。学会表彰の栄誉にあずかることも経験し、大変光栄でした。初めて海外にいったのも、北京の国際学会でした。

アットホームだった研究室。
第2の“ふるさと”に。

我々が学生時代の研究室はすごくアットホームでした。寝る間を惜しんで研究室に寝泊まりする熱心な学生もいれば、夜遅くまで悪ふざけして盛り上がる学生もいました。研究・実験もしながらも、これからの生き方を熱く議論したり、恋愛の悩み!?を打ち明けたりするなど、我々の生活の中心でした。かけがいのない時間を過ごした場所、大切な仲間のいた環境資源工学科は自分にとって第2のふるさとといっても過言ではありません。

先日、コロナ禍で厳しい生活を強いられている学生達を元気づけようと、海外にいる同期や、各分野で活躍する卒業生が集まって、現役学生とオンラインで交流する場を設けました。このような状況だからこそ、各業界で活躍する卒業生の姿を見て、将来に希望を抱いてほしいと思います。

原点は大学時代の学び。
学会で論文賞を受賞。

大学で学んだことを社会で活かしたかったので、素材開発、環境リサイクルビジネスなどを幅広く展開している三菱マテリアルに入社しました。2003年入社してすぐに中央研究所に配属され、2020年までずっと研究開発に従事しました。入社当時、私の専門分野であった水処理に関するテーマを担当することになりました。非常に難易度の高い水処理技術(セレンの汚染水)でしたので、「これは君がライフワークとして取り組むべきテーマだ」と当時の上司から命を受けました。新入社員にとっては重すぎる研究テーマでしたが、実は在学中に学んだ技術を応用すれば解決できると確信していたので、入社して1年ほどで基本技術を完成し、3年後には実用化をさせました。その反響は非常に大きく、資源素材学会で論文賞の栄誉にも与りました。

大学で学んだことを企業の研究開発に活かすことができ、実用化に成功したことは、社内でも大いに話題となりました。社会人生活として申し分ないスタートを切ることができたと思います。

その後は、水処理や都市鉱山リサイクルに従事してきました。例えば、現在関心の高まっているリチウムイオン電池のリサイクルや都市ごみ焼却灰の資源化技術などです。開発のリーダーとして挑戦的なテーマに果敢に取り組んできました。

脱炭素社会の構築に向けて。
「人と社会と地球のために」。

現在は、マーケティング室に在籍し、新規事業出を担当しています。新しい市場ニーズに対して、付加価値の高い素材やサービスを提供することでビジネスを提案します。現代の資源工学者に相応しい業務、すなわち都市鉱山という新資源の開拓、再生可能エネルギーという脱炭素電源の開発を通じて、サステナブな社内に貢献することを目指しています。リサイクルやエネルギー分野は、環境資源工学科で学んだ資源開発、資源分離、製錬技術などの知識や経験が大いに活かせると思います。
来るべき未来は、脱炭素&循環型の社会が形成され、我々のライフスタイルや価値観が大きく変化していきます。素材メーカーである三菱マテリアルは、再生可能な材料やエネルギーのサプライヤーになっていくことが2050年に求められる役割であり、使命であると考えています。

三菱マテリアルがそのような企業体に成長するため、新しいビジネスを創出が不可欠です。一例をあげるとバッテリーです。クリーンエネルギーの貯蔵物質としてバッテリーの利用シーンは急増します。再生可能エネルギーは結局のところ、人の都合で発電することができません。太陽光や風力は天候に依存するため、発電したエネルギーを貯蔵しておく必要があります。原子力あるいは火力発電は人の都合で電気を作れますが、再生可能エネルギーはバッテリーのようなエネルギー貯蔵とセットでないと最大限に利用することができないのです。当社は、脱炭素社会のキーデバイスであるバッテリーに対してどのような素材提供、サービス創出ができるかを考えています。

グローバルに物事を見て、
あるべき社会を追求してほしい。

これからのサステナブルな社会は脱炭素社会であり、サーキュラーエコノミーの社会です。そのような大きなパラダイム転換で求められる知識や技術をダイレクトに学べる場は環境資源工学科だと思います。

市場はグローバルです。我が国だけという捉え方はもうないですし、当学科の卒業生の多くが海外での仕事を経験しています。私は、環境資源工学科は、これからの社会に必要とされる英知を学べる場所であり、自分の可能性を一番広げることができる学科だと信じています。そういうマインドを持った受験生の方はぜひ、環境資源工学科で学んでほしいです。

そして、広い視点でグローバルに物事を見て、我々の社会がどうあるべきかを追及してほしいと思います。